今回の記事は前回の続きです。
[1]ミカサフミ
『ミカサフミ タカマナルアヤ』につぎのような一節があります。
ウツホウコキテ (ウツホ(空)動きて)
カゼトナル (風となる)
カゼホトナレバ (風、ホ(火)となれば)
ツチモマタ (土もまた)
ミヅハニトナル (水、埴となる)
コノヰツゝ (この五つ)
マジワリナレル (交わり成れる)
カンヒトハ (神人は)
アウワアラワル (アウワ顕る)
ミナカヌシ (ミナカヌシ)
クニタマヤモニ (クニタマ八方に)
ヨロコウミ (万子生み)
<意訳>
天地創造の初め、「空」(くう)が動いて「風」となった。風は「火」となり、泥土は「水」と「埴」(固い土)となった。この5つの元素が交わって成る人は、いわば宇宙の根源「アウワ」の顕現といえる。それが地上に生まれた最初の人間、「ミナカヌシ」である。ミナカヌシから始まり、やがて地球のあちらこちらに数多くの子が生まれていった。
上記の文章には、空・風・火・水・土の5大元素が交わって人に成ったとありますが、これでは「風が吹けば桶屋が儲かる」と同じで、話が飛び過ぎです。5大元素が交わって人に成るまでのプロセスがあるはずですが、では、それはどういったものでしょうか?
[2]ヴェーダ
私はヴェーダのことをよく知らなのですが、「TIMELESS EDITION」さんのホームページに大変詳しく、かつ、分かりやすく書かれていますので、それを参考にさせていただきました。以下はその中の「この世界はどのようにしてできた?」の記事から一部抜粋して引用したものです。
- 空が生まれ、空から風、風から火、火から水、水から土が生まれた。
- 空から聞く器官である耳が進化した。風から触れる器官である肌が進化した。火から見る器官である目が進化した。水から味わう器官である舌が進化した。土から匂いを嗅ぐ器官である鼻が進化した。
- 五大元素から、内的器官であるマインド、知性、エゴ、記憶が作られた。マインドは優柔不断の本質を持ち、知性は決断の本質を持ち、エゴは行為者の概念を持ち、記憶は考えることと思い出すことの本質を持つ。マインドを司る神はチャンドラ、知性はブランマ神、エゴはルドラー、記憶はヴァースデーバ。
- 空から話す器官である舌が作られた。風から掴む器官である手が作られた。火から移動する器官である足が作られた。水か、排泄する器官である肛門が作られた。土から繁殖の器官である生殖器が作られた。
- 5大元素から、5つのプラーナが作られた。
- 5大元素から、5つの顕在化した五大元素が作られた。
- 顕在化した5大元素から、肉体が形成された。
注意すべきは、上記1~5までは目に見えない世界の話だということです。この世界ができるプロセスは、微細なものから始まり、どんどん粗雑化され、可視化されたものができていきます。上記6・7からが目に見える世界の話です。
ちなみに、ヴェーダでは、私たちの体を3つに分類しています。
- グロスボディ(粗大な身体):私たちが一般的に肉体と呼んでいる、物質的な体。
- サトルボディ(微細な身体):実体化されていない5大元素で作られいる。そのため、全ては肉体の属する特定の臓器などではなく、実体化していない見えないエネルギーのようなもの。
[3]「ヰクラムワタ」のこと
ところで、ヲシテ文献には「ヰクラムワタ」という言葉が出てきます。例えば、アワウタを歌えば「ヰクラムワタ」が整えられると書かれています。「ヰクラムワタ」を「五臓六腑」と訳される方がいらっしゃいますが、ヲシテ研究家の池田満先生によると、「ヰクラ」を「五臓」とするのは間違いだということです。
「ヰクラ」は、「こころは」(良心、真心)、「みやひ」(他人を思いやる心、哀れを知る心、情けを思う心、記憶)、「たま」(人の意識そのもの)、「しゐ」(生命維持の欲求)、「しむ」(外に及ぼす欲求)の5つで、大雑把に言うと「こころ」にあたるもの、目に見えない世界のモノとのことです。
一方、「ムワタ」は、「フクシ」、「ナカゴ」、「キモ」、「ヨコシ」、「ムラト」、「ワタ」の6つの内臓のことで、目に見える世界のモノです。
上記『ヴェーダ』との関係で言えば、「ヰクラ」は「(3)五大元素から、内的器官であるマインド、知性、エゴ、記憶が作られた。」に、また、「ムワタ」は「7)顕在化した5大元素から、肉体が形成された。」に相当するのかもしれません。
<2023.6.21追記>
あるいは、ヰクラは5つのチャクラと対応しているのかも。
文責:与左衛門、協力:角大師
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