縄文の神聖幾何学

「ホツマツタヱ」「ミカサフミ」「フトマニ」に秘められた神聖幾何学の叡智を探る。

ヲシテ文献は古代エジプト神トートの教えか?

1. 古代エジプトの神トート

 古代エジプトの神々の中に、トートと呼ばれる神がいます。トートは知恵を司る神で、トキまたはヒヒの姿をしています。文字を創ったのもトートだと言われます。

 ドランヴァロ・メルキゼデク著『フラワー・オブ・ライフ第1巻』によると、トートは古代エジプト以前、1万6000年間にわたってアトランティスの統治者で、その時代にはアーリッチ・ヴォマテリスと呼ばれていました。

 アトランティス大陸が海の底に沈んだ後、当時ケムと呼ばれていたエジプトの地に移り、現地の未開人にさまざまな叡智を授け、文明の発展と進化を促しました。ギザの大ピラミッドを建設したのもこのトートです。

 また、エジプトが滅亡したとき、ギリシャという次なる大文明を創始したのもトートで、ギリシャではヘルメスの名で呼ばれました。

2. 古代日本におけるトートの痕跡

 私は『フラワー・オブ・ライフ第1巻・第2巻』を読んで神聖幾何学のことを知りました。第1巻の日本語版の発刊は2001年ですが、神聖幾何学について、いまだにこれを超える本はないのではないかと思います。この本に書かれた情報の大半は、ドランヴァロがトートから直接教わったものだそうです。

 その後、池田満著『よみがえる縄文時代イサナギ・イサナミのこころ』に掲載されているヲシテ文献ミカサフミ ワカウタのアヤ』を読んでいる時に、「あっ! これは神聖幾何学そのものではないか」と気がつきました。

 また、先日『ヲシテと古代錬金術』の記事でも書いたように、ヲシテ文献には錬金術のことが書かれていると思われます。

 錬金術を表す英単語アルケミー(alchemy)の語源は、アラビア語で技術を意味するアルキミア(alkimia)だといいます。アル(al)は英語のtheと同じようなアラビア語の定冠詞で、キミア(kimia)は古代におけるエジプトの呼び名、ケム(keme)のことです。つまり、アルケミーは「ケムの技術」を起源としています。

 そして、ケムの人々に叡智と技術を授けたのがトートです。そのため、トートは錬金術の祖と呼ばれ、トートによる『エメラルド・タブレット』には、錬金術の奥義が記されていると言われています。

 さて、以上のことから、私の考えどおり、ヲシテ文献に神聖幾何学錬金術のことが書かれているとすれば、トートの教えが縄文時代の日本にも伝わっていた可能性があるかもしれません。そう思って、いろいろ調べてみた結果、ひとつ思い当たる場所がありました。それは、比叡山の麓、滋賀県大津市坂本にある日吉大社です。

3. 日吉大社

 『ホツマツタヱ』によると、イサナギ・イサナミはオキツホにて七代目のアマカミ(古代の天皇の称号)に即位し、ヤヒロのトノを建て、そこを国の中心として統治をおこないました。ヲシテ研究の第一人者である池田先生によると、その場所が後の日吉大社とのことです。

 日吉大社のことを調べてみると、以下のように古代エジプトやトートとの共通点がいくつも見られます。(実際に自分の目で確かめるため、昨年12月4日に協力者の角大師さんとともに現地を訪ねてきました。)

(1)狛犬

 狛犬の起源はスフィンクスだという説があります。日吉大社狛犬は本殿の上に置かれているのが特徴です。

 ちなみに、ギザのスフィンクスの前足の間にある、トトメス四世(紀元前1419年?~1386年?)によって設置されたとされる「夢の碑文」には2体のスフィンクスが描かれており、また、古代エジプトでは二元論的信仰がされていたことから、スフィンクスは元々2体存在したのではないか、と考えるエジプト学者もいます。

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左:日吉大社狛犬(掲載元:ウィキペディア)、右:スフィンクスと夢の碑文(掲載元:産経ニュース)

(2)八王子山

 古代の日本では、美しい円錐形をした山は神の居ます山として崇められ、その麓に社を建てて、人々はそこから山を拝みました。日吉大社も同じで、ご神体は社の中に祀られているのはなく、背後の八王子山がご神体です。こうした山のことを神奈備と呼びますが、これはいわば日本版ピラミッドと言えるかもしれません。

 八王子山の名前の由来はよく分かっていませんが、『ホツマツタヱ』に記された初代アマカミであるクニトコタチの八人の皇子のことが思い起こされます。皇子たちの名はト、ホ、カ、ミ、ヱ、ヒ、タ、メといい、八方面に赴いてそれぞれのクニを治めました。

 一方、古代エジプトのヘルモポリス神話においては、世界は八柱の神(オグドアド)によって作り出されたとされています。その後、この神々が眠りにつきますが、世界が終焉を迎えたとき、また新しい世界を生み出すために目覚めさせる、その役目を請け負ったのがトートだとされています。あるいは、トートが創造神とされました。

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左:八王子山、右:ギザの大ピラミッド(掲載元:ウィキペディア

(3)金大巌

 八王子山の山頂付近に「金大巌」(こがねおおいわ)と呼ばれる磐座があります。高さ10mほどの大岩で、ここに神が降り立ったとされます。

 石の表面が鏡のように平らになっていて、古い時代には「朝日に輝く金大巌」と言われたそうです。今、朝日に輝く様子が見られるという話は聞きませんが、昔は朝日を反射して太陽のごとく燦然と輝いたものと思われます。古代の人たちがこの磐座を太陽神の降臨する場所として神聖視したことは想像に難くありません。

 古代の日本人は太陽を神として信仰しましたが、古代エジプトでも同じく、太陽神ラーを最高神として崇拝しました。

 

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左:金大巌、右:太陽神ラー

(4)神輿

 金大巌を挟むようにして、牛尾宮と三宮宮という2つの社が建っています。牛尾宮には大山咋神荒魂という男神、三宮宮には鴨玉依姫神荒魂という女神が祀られています。

 毎年春に行われる日吉大社山王祭は、2基の神輿をこの2つの社まで担ぎ上げることから始まります。八王子山の標高は381メートルでそれほど高くはないものの、勾配がかなり急なため、身一つで歩いてもそれなりにしんどいです。そこを重さ約1トンもある神輿を担いで登るわけですから、いくら大勢で担ぐとはいえ、相当大変だと思います。

 担ぎ上げた2基の神輿はそれぞれの社の中に納められ、そこに男神大山咋神荒魂、女神の鴨玉依姫神荒魂が宿ります。

 この2基の神輿は、古代エジプトの「太陽の船」を思い起こさせます。古代エジプト人は、毎日変わることなく繰り返される太陽の運行を永遠の秩序ととらえ、太陽神ラーとして信仰していました。そしてこの太陽神は、昼の間は「マアンジェト」という名の船に乗り天空を航行し、夜は「メセケテト」という船で冥界を移動すると考えられていました。

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左:牛尾宮と三宮宮、右:太陽の船

(5)山王鳥居

 日吉大社の鳥居は山王鳥居と呼ばれ、通常の鳥居の上に三角形の屋根がついたような独特な形をしています。なぜそのような形をしているのかは分かりませんが、神奈備である八王子山を象っているのかもしれません。まるでピラミッドのようです。

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左:山王鳥居、右:ギザの大ピラミッド(掲載元:ウィキペディア

(6)神猿

 日吉大社では猿が神さまの使いとされます。「神猿」と書いて「まさる」と読み、親しみを込めて「神猿(まさる)さん」と呼ばれています。なぜ猿が神さまの使いなのかはよく分かっていませんが、おそらく原始信仰の名残りではないかと推測されています。

 古代エジプトの神トートはトキの姿のほかに、「大いなる導きのヒヒ」と呼ばれるとともにヒヒの姿で描かれます。また、太陽神ラーを補佐することから「ラーの心臓」とも呼ばれます。

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左:神猿、右:ヒヒの姿のトート(掲載元:ウィキペディア

 

 以上、日吉大社古代エジプトやトートとの共通点を列挙してみました。

 それ以外にも、例えば「見ざる・言わざる・聞かざる」の三猿は古代エジプトを起源とするだとか、古代の出雲大社はギザの大ピラミッドの内部構造と酷似しているだとか、福岡県うきは市にある珍敷塚古墳には古代エジプト太陽の船とそっくりの壁画が描かれているだとか、古代エジプトと古代日本のつながりを思わせる痕跡があります。

 私はトートの教え、すなわち神聖幾何学錬金術の叡智が、クニトコタチイサナギ・イサナミ、アマテル等のアマカミたちに伝わっていた可能性があるのではないかと思います。

 また、ヲシテ文献には、アマテルの姉ワカヒメは鋳物師に命じてフトマニ図(?)を「カナアヤ」にして、民にあまねく教え広めたと書かれてます。このカナアヤがどんな金属版なのかは分かりませんが、何となくトートの記した『エメラルド・タブレット』を思い起こさせます。まあ、考えすぎかもしれませんが(笑)。

 

文責:与左衛門、共同研究者:角大師

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