縄文の神聖幾何学

「ホツマツタヱ」「ミカサフミ」「フトマニ」に秘められた神聖幾何学の叡智を探る。

キツ(東西)の教え

1. 東西南北の語源

 東西南北をなぜ「ひがし」「にし」「みなみ」「きた」と呼ぶのか、ご存じですか?

 『ホツマツタヱ 東西(きつ)の名と穂虫(ほむし)去るアヤ』によると、

  • 東は、日()の出ずる頭(かしら)ゆえ、ひがし。
  • 南は、日が高く昇って皆(みな)よく見()えるようになるゆえ、みなみ。
  • 西は、日が落ちるとき、丹()色(註.赤色)に沈(ず)むゆえ、にし。

 なのだそうです。

 また、米を炊く様子から、

  • はじめに、火()をおこし、釜で炊(かし)ぐゆえ、ひがし。
  • そして、煮えはじめると、湯がなみなみと波立つゆえ、みなみ。
  • その後、米が煮()え静(ず)まるゆえ、にし。

 ということでもあるようです。

 また、北については、

  • 南向きの宮は、長生きをもたらす太陽の気()が、宮の奥まで来(きた)すことから、北という。

 とあります。

2.  キツヲサネ

 また、東西南北を春夏秋冬に当てはめて、

  • 春にあたる東は、萌(ざ)す、の「き」。
  • 夏にあたる南は、栄(か)える、の「さ」。
  • 秋にあたる西は、実を付()ける、の「つ」。
  • 冬にあたる北は、根()を張る、の「ね」。

 というように、東は「キ」、西は「ツ」、南は「サ」、北は「ネ」とも呼ばれます

 加えて、東西南北の中心を、

  • 国を治(をさ)める、の「を」。

 と言い、あわせて「キツヲサネ」。

 当時の人々は「キツヲサネ」を、東西南北と中央を守る五柱の神として敬いました。

3.  文字が語ること

 さて、ここからがヲシテ文献の真骨頂。

 先日、共同研究者の角大師さんとキツヲサネの文字を眺めながら、あれやこれや話していました。私が母音のある規則性を指摘すると、角大師さんが、子音にも規則性があるのではないかと気づきました。

 ヲシテ文字は、5つの母音と10の子音の組み合わせから成ります。そこで、キツヲサネの5文字を母音と子音に分解して、ヲシテ48音図に当てはめてみました。

注.四十八音図表は日本ヲシテ研究所から借用

 すると、ご覧のとおり、母音は全5種類が揃い(水色の矢印)、また子音は1つ置き(緑色の矢印)というパターンが見られます。これは偶然ではなく、何か意味がありそうです。

 改めて文献を読み直してみて、その意味することが分かった気がします。

 キツヲサネは、その母音のかたちから、この世界を生みだす聖なる五大元素、ウツホ(空)、カセ(風)、ホ(火)、ミツ(水)、ハニ(埴・土)を表しています。また、5つの子音のかたちは、季節の巡りと植物の成長過程と表しています。具体的には下図のとおりです。

 つまり、『東西(きつ)の名と~』のアヤは、キツヲサネの5文字に込められた意味を分かりやすく説明しているのです。

 ヲシテの1文字にこれほど多くの情報・意味が含まれているとは、まさに驚きです。現代において、そんな文字は世界中どこを探しても存在しないのではないのではないでしょうか。ヲシテ文献、恐るべし。底知れぬ深さです。こんな凄い言語を使っていた私たちのご先祖様って、いったい何者なのでしょうか。

4.    教えの初め

 ところで、ホツマツタヱは全部で40アヤ(章)ありますが、その第1番目が『東西(きつ)の名と~』のアヤです。なぜ、東西(きつ)の名を最初に教えるのか。その理由がミカサフミの第1番目の『キツヨヂ(東西四締)のアヤ』に書かれています。

キツノナオ  (キツ(東西)の名を)
ヲシエノハツト(教えの初と)
ナスユエハ  (為すゆえは)
イマワレウメル(今、我産める)
タラチネノ  (たらちねの)
サキノミヲヤモ(前の御祖も)
コトコトク  (ことごとく)
アメノタネナリ(天の種なり)

<意味>
 私たちを産んだ両親、そのまた両親、そのまた両親とずっと辿っていくと、ことごとくこの宇宙を生み出した神アメミヲヤにつながります。つまり、私たちは皆、アメミヲヤの種なのです。

ヒトノミハ  (人の身は)
ヒツキノフユニ(日月のフユに)
ヤシナワレ  (養われ)
メグミシラセン(恵み知らせん)
ソノタメニ  (そのために)
イデイルキツオ(出で入るキツ(東西)を)
ヲシユナリ  (教ゆなり)

<意味>
 人の身は、太陽と月の恵みに養われています。そのことを知らせるために、日月の出で入るキツ(東西)のことを教えるのです。

 

 今風に言えば、ワンネスの教えですね。

 宇宙の根源や天地自然とのつながりを見失い、混迷の時代を生きる現代の私たちにとって、とても大切なことを教えてくれるのが、この古き「キツの教え」です。

 

文責:与左衛門、共同研究者:角大師

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